山形竜也
今回の記事は、なぜアダルトチルドレンになるのか？その原因と背景について解説します。その中でも、原因となる大きな割合を占めるのが【機能不全家族】です。では、機能不全家族が原因で、どのようなアダルトチルドレンになっていくのか、具体例を踏まえて詳しくお伝えします。
「なぜアダルトチルドレンになるんだろう？」「機能不全家族とアダルトチルドレンはどのように関わっているんだろう？」
このような疑問に答えていきます。
★この記事の内容は・・・
- 機能不全家族によるアダルトチルドレンの形成過程がわかります
- 機能不全家族だったことが現在にどのような影響を与えているかがわかります
- 自己否定から自己受容へと視点を変えることができるようになります
心理セラピストとして、これまでに1000人以上のアダルトチルドレンの方々をサポートしてきた私が具体例を交えて詳しく解説します。
【①機能不全家族での成育】なぜアダルトチルドレンになるのか？その原因と背景
アダルトチルドレンの主な原因として、機能不全家族が挙げられます。
機能不全家族とは、機能不全家族とは、家族がそれぞれの役割を果たせず（親は親としての役割を。子どもは子どもらしく。）、子どもが安心・安全に成長できる環境を提供できない家族のことです。
機能不全家族の主な特徴は・・・
- アルコール依存症や薬物乱用のある親
- 精神疾患を抱える親
- 虐待や放置
です。
これらの影響を受けて、どのようにアダルトチルドレンになっていくのか詳しく解説していきます。
1.アルコール依存症や薬物乱用のある親
アルコールや薬物に依存する親がいる家庭では、
・予測不可能なことが起きたり、
・安心感が得られない環境
を強いられることになります。
予測不可能な家庭環境が子どもに与える影響
アルコールや薬物に依存する親がいる家庭では、家庭の雰囲気が突然変化することがよくあります。親の機嫌や行動が予測できないため、子どもは常に警戒心を抱いて生活することを強いられます。
そのような、予測不可能な家庭環境が子どもに与える影響を３つ紹介します。
- 感情的な不安定さ
- 一貫性の欠如
- 責任の混乱
1.感情的な不安定さ
親の気分や態度が急変することで、子どもは感情的な揺れに対処する能力を身につけにくくなります。
子どもの感情調整能力は、安定した環境と一貫した反応を通じて発達します。親の感情が予測不可能に変化する環境では、子どもは安全な感情表現の方法や適切な感情調整のモデルを学ぶ機会を失います。
また、常に親の気分を読もうとすることで、自身の感情に集中する余裕がなくなり、健全な感情発達が阻害されます。
結果として、感情の波に翻弄されやすく、ストレス耐性の低い傾向が形成される可能性があります。
例）
アルコール依存症の父親が、酔っていない時は優しく接するが、酒に酔うと突然怒り出し、家族に暴言を吐く。子どもは父親の機嫌を常に伺い、自分の感情を抑えることで対処しようとする。
2.一貫性の欠如
親の言動に一貫性がないため、子どもは何が正しく何が間違っているのかを判断するのが難しくなります。
子どもの道徳観や価値観の形成には、一貫した規範と反応が重要です。親の言動が状況によって大きく変わる環境では、子どもは安定した価値基準を内在化することが困難になります。
例えば、ある時は些細なことで厳しく叱られ、別の時は重大な過ちを見過ごされるような状況が続くと、行動の結果を予測したり、適切な判断基準を形成したりすることが難しくなります。
これは長期的に、意思決定能力の低下や、社会的規範への適応困難につながる可能性があります。
例）
母親が気分の浮き沈みが激しく、ある日は子どもの成績を褒めて喜び、翌日には同じ成績を「もっと頑張れ」と叱責する。子どもは自分の行動や成果に対する評価基準がわからなくなる。
3.責任の混乱
しばしば子どもが親の役割を担わされ、年齢不相応な責任を負うことがあります。
アルコールや薬物に依存する親は、しばしば基本的な親としての責任を果たせなくなります。その結果、子どもが家事、年下のきょうだいの世話、時には親自身の世話までを担うことになります。
こうした役割の逆転（parentification）は、子どもの通常の発達段階に即した経験や学習の機会を奪います。年齢不相応な責任を負うことで、子どもは自身の感情的・社会的ニーズを無視し、過度に「大人びた」行動パターンを発達させる可能性があります。
これは長期的に、自己犠牲的な行動パターンや、健全な自己主張の困難さにつながる可能性があります。
例）
うつ病の母親が家事をこなせないため、10歳の長女が家族の食事準備、洗濯、弟妹の世話など、本来親が担うべき家庭内の責任のほとんどを引き受けている。
これらの影響により、子どもは健全な自己像や安定した価値観を形成することが困難になります。また、将来の人間関係においても、予測不可能な状況に対する過剰な警戒心を持ち続けることがあります。
安全感の欠如と常に緊張状態にある子どもの心理
アルコールや薬物乱用のある親のもとで育つ子どもは、基本的な安全感を得られない環境に置かれています。
そのような子どもは、どのような心理状態に置かれているか。いくつか挙げてみます。
◉常に緊張状態
子どもは親の次の行動を予測しようと、常に神経を張り詰めた状態で生活します。
◉トラウマ反応
予期せぬ出来事や暴力に遭遇する可能性から、慢性的なストレスや不安を抱えることになります。
◉感情の抑圧
自分の感情を表現することが安全でないと感じ、感情を抑圧したり隠したりする習慣が身につきます。
◉自己防衛機制
危険から身を守るため、過度の警戒心や回避行動を発達させることがあります。
このような環境で育つ子どもは、安心して自己を表現したり、他者を信頼したりすることが難しくなります。その結果、成人後も親密な関係を築くことに困難を感じたり、自己肯定感が低い状態が続いたりすることがあります。
長期的には、このような経験がアダルトチルドレンの特徴として現れ、対人関係や自己認識に大きな影響を与え続けることがあります。
しかし、適切なサポートと自己理解を通じて、これらの影響から回復し、健全な関係性を築いていくことは可能です。
次は、精神疾患を抱える親の影響を受けて、どのようにアダルトチルドレンになっていくのか詳しく解説していきます。
2.精神疾患を抱える親
精神疾患を抱える親のもとで育つ子どもたちは、独特の課題に直面します。親の精神状態が不安定であることで、子どもの成長に必要な環境が十分に提供されないことがあります。
子どもの情緒的ニーズが満たされない状況
精神疾患を抱える親は、自身の症状に対処することで精一杯となり、子どもの情緒的ニーズに十分に応えられないことがあります。
親が情緒的ニーズに応えられないことで、子どもにどのような影響があるのでしょうか。代表的な４つを紹介します。
- 感情的不在
- 一貫性のない愛情表現
- ロールモデルの欠如
- 自己肯定感の低下
1.感情的な不在
親が自身の内面的な苦痛や症状に集中するあまり、子どもの感情に気づかない、あるいは適切に反応できないことがあります。
例）
重度のうつ病を患う母親が、8歳の娘が学校の絵画コンクールで優勝したという嬉しい報告に対して、無表情で「そう」とだけ答え、娘の喜びや達成感を全く認識できない。
2.一貫性のない愛情表現
親の精神状態によって、愛情表現が極端に変化する可能性があります。これにより、子どもは安定した愛着関係を形成することが困難になります。
例）
双極性障害の父親が、躁状態の時は子どもに過剰な愛情と贈り物を与えるが、鬱状態になると子どもを完全に無視し、話しかけても反応しない。10歳の息子は父親の態度の急激な変化に戸惑い、常に不安定な関係性の中で生活している。
3.ロールモデルの欠如
健全な感情表現や対人関係のスキルを親から学ぶ機会が限られることがあります。
例）
社交不安障害を持つ両親のもとで育つ12歳の少女が、両親が他人と会話を避ける姿を見て育つ。その結果、学校での友人関係の築き方や、先生との適切なコミュニケーションの取り方がわからず、社会的に孤立してしまう。
4.自己肯定感の低下
親からの適切な承認や励ましが不足することで、子どもは自分の価値を見出すことが難しくなります。
例）
慢性的な不安障害を抱える父親のもとで育つ15歳の少年が、どんなに頑張って良い成績を取っても、父親から「もっと良くできたはずだ」と言われ続ける。常に否定的なフィードバックを受け続けることで、少年は自分の努力や能力に自信が持てなくなり、何事にも消極的になってしまう。
これらの状況により、子どもは自身の感情を理解し、表現することに困難を感じる可能性があります。また、他者との健全な関係構築にも課題を抱えることがあります。
親の症状に対処するために早熟になる子どもたち
精神疾患を抱える親のもとでは、子どもが年齢不相応な責任を担わされることがよくあります。これは「早熟化」や「親化」と呼ばれる現象につながります。
どのようなことが影響して「早熟化」や「親化」となるのでしょうか。いくつか挙げてみます。
◉役割の逆転
子どもが親の世話をする立場になることがあります。例えば、親の服薬管理や家事の担当など。
◉感情的サポート役
子どもが親の感情的なサポート役を担うことで、自身の感情的ニーズを後回しにしがちになります。
◉過剰な責任感
家族の安定を保つために、子どもが過度に責任感を持つようになることがあります。
自己犠牲的な行動: 親を守るために、自分のニーズや願望を抑えてしまう傾向が生まれます。
◉自己犠牲的な行動
親を守るために、自分のニーズや願望を抑えてしまう傾向が生まれます。
このような早熟化は、一見すると子どもが成熟しているように見えますが、実際には健全な心理的発達を阻害する可能性があります。
◉自己主張の難しさ
常に他者のニーズを優先することで、自分の欲求や感情を表現することが苦手になります。
◉完璧主義傾向
家族の期待に応えようとするあまり、過度に高い基準を自分に課すことがあります。
◉境界線の設定困難
他者と自己の境界線を適切に設定することが難しくなり、対人関係でのストレスを感じやすくなります。
これらの経験は、成人後もアダルトチルドレンとしての特徴として残り続けることがあります。
3.虐待や放置
虐待や放置は、子どもの心身の発達に深刻な影響を与え、成人後も長期にわたって問題を引き起こす可能性があります。
これらの経験は、アダルトチルドレンの特徴を形成する主要な要因の一つとなっています。
- 身体的・精神的・性的虐待がもたらすトラウマ
- ネグレクトによる基本的なケアの不足が及ぼす長期的影響
1.身体的・精神的・性的虐待がもたらすトラウマ
虐待は、子どもに深刻で長期的なトラウマをもたらします。その影響は成人後も続き、様々な形で現れることがあります。
身体的虐待、精神的虐待、性的虐待の順に見ていきましょう。
【身体的虐待】===============
◉慢性的な緊張と警戒心
常に危険を感じ、リラックスすることが困難になります。
例）
30歳の男性が、幼少期の虐待経験により、常に周囲の動きに過敏に反応する。公共の場所では常に背中を壁に向けて座り、突然の物音に対して過剰に驚愕する。家でさえ完全にリラックスすることができず、ドアや窓の施錠を何度も確認し、些細な物音にも緊張してしまう。その結果、慢性的な不眠や頭痛に悩まされている。
◉暴力の連鎖
暴力を問題解決の手段として学習し、対人関係での暴力的な傾向が現れることがあります。
例）
27歳の女性が、幼少期に両親から受けた身体的虐待の影響で、自分の3歳の子どもに対して、しつけと称して過度に厳しい体罰を与えてしまう。言葉で説明する前に手が出てしまい、その後で激しい罪悪感に苛まれる。パートナーとの口論でも、感情が高ぶると物を投げたり、叩いたりしてしまい、関係性に深刻な問題を引き起こしている。
◉身体的症状
ストレス関連の身体的な健康問題を発症しやすくなります。
例）
35歳の男性が、幼少期のネグレクト経験により、慢性的な胃腸障害や頭痛、不眠症に悩まされている。医学的には特に異常が見つからないにもかかわらず、ストレスを感じると激しい胃痛や吐き気に襲われ、仕事や日常生活に支障をきたす。また、頻繁に風邪をひくなど、免疫系の機能低下も見られ、全体的な健康状態が良くない。
【精神的虐待】===============
◉低い自尊心
継続的な否定や批判により、自己価値感が著しく低下します。
例）
29歳の女性が、幼少期から両親に常に批判され、「お前は何をやってもダメだ」と言われ続けた結果、仕事での成功や周囲からの称賛を受けても、自分の価値を信じることができない。昇進の機会があっても「自分にはふさわしくない」と断り、恋愛関係でも「相手に値しない」と感じて親密な関係を築くことを恐れる。日常的に自己否定的な内的対話を繰り返し、些細なミスでも激しく自分を責めてしまう。
◉否定的な自己イメージ
自分は「価値がない」「愛されるに値しない」という歪んだ自己認識を形成します。
例）
33歳の男性が、継続的な精神的虐待を受けて育った結果、自分は「欠陥品」だと信じ込んでいる。職場では常に自分の意見を控え、「どうせ自分の考えは間違っている」と思い込んでいる。友人関係では、相手が親切にしてくれても「本当の自分を知ったら嫌われる」と考え、深い関係を築くことを避ける。結婚を望んでいるにもかかわらず、「自分は誰からも愛される価値がない」と思い込み、恋愛関係を一切持とうとしない。
◉感情表現の困難
感情を表現することが安全でないと学習し、感情の抑圧や解離が起こりやすくなります。
例）
5歳の男性が、感情表現を厳しく抑制される家庭環境で育ち、自分の感情を認識し表現することが極めて困難になっている。喜びや悲しみを感じても表情に表れず、「何を感じているの？」と聞かれても「分からない」としか答えられない。ストレスが溜まると突然パニック発作を起こし、その間の記憶が曖昧になる解離症状を経験する。親しい友人の結婚式でさえ、喜びを適切に表現できず、周囲から冷淡だと誤解されることがある。
【性的虐待】===============
◉深い羞恥心と罪悪感
不適切な性的経験により、自己嫌悪や罪悪感に苛まれることがあります。
例）
32歳の女性が、幼少期の性的虐待の経験により、自分の身体を極端に嫌悪し、鏡を見ることさえ避けるようになっている。入浴時も可能な限り自分の身体を見ないようにし、親密な関係を持つことに強い罪悪感を感じる。また、虐待されたのは自分に原因があったのではないかと自責の念に駆られ、カウンセリングを受けても「自分には幸せになる資格がない」という思いを払拭できずにいる。
◉境界線の混乱
適切な身体的・感情的境界線を設定することが困難になります。
例）
28歳の男性が、幼少期の性的虐待により、他者との適切な距離感を保つことが極めて困難になっている。職場では、同僚の個人的な空間に無自覚に侵入してしまい、トラブルを引き起こすことがある。一方で、親しい人からの善意の身体的接触（肩を叩くなど）に対して過剰に警戒し、パニック状態になることもある。また、自分の感情と他者の感情を区別することが難しく、相手の気分に過度に影響されたり、逆に自分の感情を他者に押し付けたりしてしまう。
◉親密性の問題
親密な関係性に対する恐れや不信感が生じ、健全な関係構築が難しくなります。
例）
35歳の女性が、幼少期の性的虐待経験により、親密な関係性を築くことに強い恐怖を感じている。デートの誘いを全て断り、深い友情関係さえも避けようとする。仕事上の関係は維持できるものの、それ以上の親密さを求められると激しい不安に襲われ、パニック発作を起こすことがある。結婚や家族形成への強い憧れがある一方で、親密な関係は必ず裏切りや傷つきを伴うものだという強い信念があり、孤独感と親密さへの恐怖の間で苦しんでいる。
これらの虐待経験は、アダルトチルドレンの形成のみならず、PTSD（心的外傷後ストレス障害）や複雑性PTSDなどの精神的健康問題につながる可能性が高くなります。
2.ネグレクトによる基本的なケアの不足が及ぼす長期的影響
ネグレクト（育児放棄）は、子どもの基本的なニーズが満たされない状態を指します。これは虐待と同様に深刻な影響を及ぼし、長期的な問題を引き起こす可能性があります。
では、どのような問題があるのか。愛着形成の問題、自己効力感の低下、感情調整の困難、認知発達への影響、身体的健康への影響。順に紹介していきます。
【愛着形成の問題】===============
◉不安定な愛着スタイル
養育者との安定した関係が形成されず、他者との健全な関係構築が困難になります。
例）
30歳の男性が、幼少期のネグレクトにより、親密な関係を築くことに極度の不安を感じる。恋愛関係では、相手が少しでも距離を置こうとすると激しい不安に駆られ、執拗に連絡を取ったり、逆に先に関係を断ち切ろうとしたりする。友人関係も長続きせず、常に新しい人間関係を求めては壊すサイクルを繰り返している。
◉見捨てられ不安
常に他者に見捨てられるのではないかという強い不安を抱えやすくなります。
例）
27歳の女性が、職場でわずかな批評を受けただけで、解雇されるのではないかと強い不安に襲われる。上司や同僚の表情の微妙な変化に過敏に反応し、自分が嫌われているのではないかと考え込む。恋人との関係では、相手が数時間連絡をよこさないだけで、別れを告げられるのではないかと思い詰め、パニック状態になることがある。
【自己効力感の低下】===============
◉無力感
自分のニーズが満たされない経験から、自分で状況を変える力がないと感じるようになります。
例）
35歳の男性が、仕事や私生活で問題に直面すると、すぐに「どうせ自分には何もできない」と諦めてしまう。昇進の機会があっても「自分にはふさわしくない」と断り、不満のある人間関係も「仕方ない」と受け入れてしまう。新しいスキルを学ぶ機会があっても、「自分には無理だ」と最初から挑戦を避けてしまう。
◉依存傾向
自立的に問題解決する経験が不足し、他者への過度の依存が見られることがあります。
例）
29歳の女性が、日常生活のあらゆる場面で他人の判断や承認を求める。服を買う際も友人に同行を求め、メニューの選択も他人に委ねる。仕事では常に上司の指示を仰ぎ、自分で決断することを極端に恐れる。恋愛関係では、相手に全面的に依存し、別れることが命の危機のように感じられる。
【感情調整の困難】===============
◉感情の同定と表現の問題
自分の感情を理解し、適切に表現することが難しくなります。
例）
32歳の男性が、ストレス状況下で激しい頭痛や胃痛を感じるが、それが不安や怒りの表れだと認識できない。「今どんな気持ち？」と聞かれても「わからない」としか答えられず、感情を言語化することに強い困難を感じる。喜びや悲しみを適切に表現できないため、対人関係でしばしば誤解を招いてしまう。
◉衝動性
感情を適切に調整する能力が育っていないため、衝動的な行動につながりやすくなります。
例）
25歳の女性が、ストレスを感じると突発的な買い物や過食で対処しようとする。感情が高ぶると、友人や恋人との関係を突然切り捨てたり、仕事を衝動的に辞めたりすることがある。また、些細な刺激に対して激しい怒りを爆発させ、後悔することが頻繁にある。
【認知発達への影響】===============
◉学習の遅れ
適切な刺激や教育的支援の不足により、認知能力や学習能力の発達が遅れる可能性があります。
例）
22歳の大学生が、幼少期のネグレクトにより基礎学力が不足し、大学の授業についていくのに非常に苦労している。特に抽象的な概念の理解や複雑な文章の読解に困難を感じ、レポート作成に多大な時間を要する。また、新しい情報を効率的に学習・記憶することが難しく、試験勉強に他の学生の倍以上の時間がかかってしまう。
◉社会的スキルの不足
他者との適切な交流の機会が限られることで、社会性の発達に遅れが生じることがあります。
例）
28歳の男性が、職場での人間関係に著しい困難を感じている。雑談や冗談の意味を理解できず、場の空気を読むことが難しい。チームワークを要する場面で適切に協力することができず、同僚とのコミュニケーションでしばしば誤解や摩擦が生じる。プライベートでも友人関係を築くことが難しく、社会的孤立感を強く感じている。
【身体的健康への影響】===============
◉慢性的な健康問題
適切な栄養や医療ケアの不足により、長期的な健康上の問題が生じる可能性があります。
例）
31歳の女性が、幼少期の不適切な栄養管理により、成人後も慢性的な貧血と骨密度の低下に悩まされている。また、子供の頃に適切な歯科治療を受けられなかったため、成人してからも頻繁に歯科治療が必要となり、食事や会話に支障をきたすことがある。さらに、予防接種を適切に受けていなかったため、成人後に予防可能だった感染症にかかり、長期の入院を余儀なくされた経験がある。
◉ストレス関連疾患
継続的なストレスにより、様々な身体的症状が現れやすくなります。
例）
34歳の男性が、慢性的な頭痛、胃腸障害、不眠症に悩まされている。ストレスを感じると、激しい動悸や呼吸困難を伴うパニック発作を起こすことがある。また、頻繁に風邪やインフルエンザにかかるなど、免疫系の機能低下も見られる。医師から、これらの症状の多くがストレス関連であると診断されているが、ストレス管理の方法を見つけることに苦労している。
さいごに
これらの虐待やネグレクトの影響は、適切な支援や治療なしでは成人後も続く可能性が高く、アダルトチルドレンの特徴として現れることがあります。
しかし、専門家のサポートや自己理解を通じて、回復と成長の道を歩むことは可能です。
早期の介入と継続的なケアが、長期的な影響を軽減し、健全な自己像と関係性を構築する上で重要な役割を果たします。
