今回の記事は、なぜアダルトチルドレンになるのか?その原因と背景について解説します。様々な原因の中でも、トラウマ体験によって、どのようなアダルトチルドレンになっていくのか、具体例を踏まえて詳しくお伝えします。

「なぜアダルトチルドレンになるんだろう?」「トラウマ体験によって、どんなアダルトチルドレンになるんだろうか?」

このような疑問に答えていきます。

★この記事の内容は・・・

  • トラウマ体験によるアダルトチルドレンの形成過程がわかります
  • トラウマ体験が現在にどのような影響を与えているかがわかります
  • 自己否定から自己受容へと視点を変えることができるようになります

心理セラピストとして、これまでに1000人以上のアダルトチルドレンの方々をサポートしてきた私が具体例を交えて詳しく解説します。

【③ トラウマ体験】なぜアダルトチルドレンになるのか?その原因と背景

子ども時代のトラウマ体験は、成人後も長期にわたって影響を及ぼし、アダルトチルドレンの特徴形成に大きく影響することがあります。

特に、以下の経験は、子どもの心理的発達に重大な影響を与える可能性があります。

  1. 両親の離婚や死別
  2. 深刻な病気や事故など

この2つの経験が、子どもにどのように影響を心理的に与えていくのか詳しく解説します。

1.両親の離婚や死別

1.両親の離婚や死別

両親の離婚や死別というのは、子どもにとっては、自分の生きる世界が恐怖に陥れられるほどの出来事だと思います。

具体的にどのような心理的影響があるのでしょうか?詳しくみていきましょう。

家庭環境の急激な変化が子どもに与える心理的影響

両親の離婚や死別は、子どもの生活基盤を根本から揺るがす出来事です。

以下、子どもに与える主な心理的影響をあげてみました。

  1. 安全基地の喪失
  2. 役割の変化
  3. 自己概念の混乱
  4. 将来への不安
  5. 感情表現の抑制

1.安全基地の喪失
家庭が提供していた安全感や安定感が急激に失われることで、子どもは深い不安と不安定感を経験します。

例)
10歳の少女が、両親の突然の離婚により、それまで安心できた家庭環境が一変する。夜中に頻繁に目覚め、些細な物音にも過敏に反応するようになる。学校でも常に不安を感じ、集中力が低下し、成績が急降下する。家に帰ることへの不安から、放課後に帰宅を遅らせるようになり、先生や両親を心配させる。

2.役割の変化
片親家庭になることで、子どもが過度な責任を負わされることがあります。これは年齢不相応なストレスをもたらす可能性があります。

例)
13歳の少年が、父親の死後、家族の「男性の柱」としての役割を期待される。母親の精神状態が不安定になったため、家計の管理や幼い妹の世話まで任されるようになる。学校の勉強や部活動の時間が減り、友人との交流も減少。常に家族のことを心配し、自分の時間や楽しみを犠牲にしている状態が続く。

3.自己概念の混乱
特に離婚の場合、子どもは自分が原因ではないかと自責の念に駆られることがあります。これは自己肯定感の低下につながります。

例)
8歳の少年が、両親の離婚後、自分の行動が原因だと考え始める。以前両親が喧嘩したときに自分が悪さをしていたことを思い出し、「もし自分がいい子だったら、両親は離婚しなかったかもしれない」と考え込む。その結果、極端に従順になり、自分の欲求や意見を表現することを恐れるようになる。

4.将来への不安
家族の解体を経験することで、人間関係の安定性や将来への見通しに対する不安が生じます。

例)
15歳の少女が、母親の突然の死後、将来に対する強い不安を抱くようになる。それまで描いていた将来の夢や計画が揺らぎ、「人生はいつ何が起こるかわからない」という恐怖に苛まれる。友人との関係でも、「いつか別れが来るかもしれない」と考え、深い関係を築くことを恐れるようになる。大学進学や将来の職業選択にも躊躇し、長期的な計画を立てることができなくなる。

5.感情表現の抑制
残された親を心配させまいとして、自身の感情や需要を抑え込むことがあります。

例)
12歳の少女が、父親との離婚後、鬱状態に陥った母親を気遣い、自分の悲しみや怒りを一切表現しなくなる。学校でいじめられても、母親に心配をかけまいと黙っている。自室で一人の時だけ泣き、日記に本当の気持ちを書くことで感情を発散している。この感情抑制が長期化し、成人後も自分の感情を適切に表現することが難しくなる。

喪失感や悲嘆への対処が困難な理由

子どもが喪失感や悲嘆に適切に対処することは非常に困難です。

その理由をいくつかあげると・・・

  1. 感情処理能力の未発達
  2. 言語化の困難
  3. モデルの不在
  4. サポートの不足
  5. 継続的な影響

1.感情処理能力の未発達
子どもは強い感情を処理する能力がまだ十分に発達していないため、深い悲しみや怒りを適切に扱うことが難しいです。

例)
9歳の少年が父親の突然の死に直面し、激しい怒りと悲しみを感じるが、それらの感情をどう扱えばいいかわからない。時に激しい癇癪を起こし、時に完全に感情を閉ざしてしまう。学校では突然泣き出したり、友達に攻撃的になったりと、感情のコントロールが困難になっている。周囲の大人たちも、彼の激しい感情の揺れにどう対応すべきか戸惑っている。

2.言語化の困難
自分の感情や経験を言葉で表現することが難しく、内面で葛藤を抱え込みやすくなります。

例)
12歳の少女が両親の離婚後、複雑な感情を抱えているにもかかわらず、それを言葉で表現できない。カウンセラーや先生に「どんな気持ち?」と聞かれても「わからない」としか答えられず、代わりに身体症状(頭痛や腹痛)として感情が現れる。日記を書こうとしても、感情を言葉にできずに挫折し、結果として自分の内面を理解し、整理する機会を失っている。

3.モデルの不在
特に死別の場合、周囲の大人も悲嘆に暮れているため、適切な対処法のモデルが不在になりやすいです。

例)
14歳の少年が母親の死後、悲嘆に暮れる父親と妹を目の当たりにする。父親は悲しみから仕事に没頭し、家庭を顧みなくなる。少年は自分の悲しみを表現する適切な方法がわからず、また家族を支えなければならないと感じて自分の感情を抑圧する。周囲の大人たちも悲しみにくれ、少年に健全な悲嘆の過程を示すことができていない。

4.サポートの不足
家族構造の変化により、情緒的サポートが不足しがちになります。これにより、子どもは孤立感を深めることがあります。

例)
10歳の少女が両親の離婚後、母親と二人暮らしを始める。仕事で忙しい母親は娘の感情的なニーズに十分に応えられず、少女は寂しさや不安を一人で抱え込むようになる。学校でも友達に自分の状況を話せず、次第に孤立感を深めていく。放課後、誰もいない家に帰ることを恐れ、公園で長時間過ごすようになり、生活リズムが乱れていく。

5.継続的な影響
喪失の影響は長期に及び、成長段階に応じて新たな課題として浮上することがあります。

例)
7歳で母親を亡くした少女が、18歳で大学進学を控えた時に再び強い喪失感に襲われる。大学選びや将来の職業について母親に相談できないことの悲しみ、人生の重要な節目を母親と共有できない寂しさが湧き上がってくる。また、自立への不安が強まり、残された父親から離れることへの罪悪感も感じる。幼い頃には十分に理解できなかった喪失の意味を、成長した今、新たな形で経験している。

2.深刻な病気や事故

2.深刻な病気や事故

深刻な病気や事故などのようなトラウマ体験も、成人後も長期にわたって影響を及ぼし、アダルトチルドレンの特徴形成に大きく影響することがあります。

具体的にどのような心理的影響があるのでしょうか?詳しくみていきましょう。

長期的な不安や恐怖体験がもたらす心理的影響

深刻な病気や事故の経験は、子どもに長期的な心理的影響を与えます。

以下、子どもに与える主な心理的影響をあげてみました。

  1. 慢性的な不安
  2. 無力感
  3. 死の恐怖
  4. 身体イメージの歪み
  5. 対人関係の困難

1.慢性的な不安
健康や安全に対する過度の警戒心が形成され、常に不安を抱えた状態になることがあります。

例)
10歳の時に重度の食物アレルギー反応を経験した25歳の女性が、毎日の食事に強い不安を感じている。外食を完全に避け、自炊でも原材料を何度も確認する。些細な体調の変化にも過敏に反応し、頻繁に救急外来を受診する。この絶え間ない不安状態が、仕事や社会生活に大きな支障をきたしている。

2.無力感
病気や事故に対して何もできなかった経験から、状況をコントロールする能力への不信が生じます。

例)
12歳で交通事故に遭い、数か月の入院を経験した30歳の男性が、人生の様々な場面で強い無力感を感じている。職場では自信を持って決断することができず、常に上司の指示を仰ぐ。個人的な関係でも、問題が生じると「自分にはどうすることもできない」と諦めてしまい、積極的に解決しようとしない。この無力感が、キャリアの停滞や人間関係の困難につながっている。

3.死の恐怖
特に生命を脅かす経験をした場合、死に対する過度の恐怖や不安が形成されることがあります。

例)
15歳で白血病を経験し、長期の闘病生活を送った28歳の男性が、死に対する強い恐怖を抱えている。些細な体調不良でもがんの再発を恐れ、定期検診の度に極度の不安に襲われる。将来の計画を立てることを避け、「明日死ぬかもしれない」という考えに囚われて長期的な人生設計ができない。この死の恐怖が、人生を十分に生きることを妨げている。

4.身体イメージの歪み
病気や事故による身体的変化が、自己イメージや自尊心に深刻な影響を与えることがあります。

例)
16歳で重度の火傷を負い、顔や腕に痕が残った23歳の女性が、自己イメージの問題に苦しんでいる。鏡を見ることを避け、人前に出ることに強い不安を感じる。デートや就職面接など、外見が重要となる場面を極端に恐れ、社会的機会を自ら制限してしまう。この歪んだ身体イメージが、自尊心の低下や社会的孤立につながっている。

5.対人関係の困難
長期入院などにより、同年代との交流機会が制限されることで、社会性の発達に影響が出ることがあります。

例)
8歳から14歳まで、慢性疾患のために断続的な入院生活を送った20歳の男性が、同年代との関係構築に著しい困難を感じている。学校生活を十分に経験できなかったため、友人関係の築き方や維持の仕方がわからない。大学では孤立し、グループワークや課外活動への参加に強い不安を感じる。この社会性の発達の遅れが、学業面でのパフォーマンスにも影響を及ぼし、将来のキャリアに対する不安を高めている。

通常の発達過程の中断がもたらす長期的な課題

深刻な病気や事故は、子どもの通常の発達過程を中断させ、長期的な課題をもたらす可能性があります。

主な長期的な課題をあげると・・・

  1. 学業の遅れ
  2. 自立の遅れ
  3. 社会的スキルの発達不全
  4. アイデンティティ形成の困難
  5. 将来設計の制限

1.学業の遅れ
長期の療養により、学習の機会が制限され、学業面での遅れや不安が生じることがあります。

たとえば、病院での治療や自宅療養中は、通常の学校教育を受けることが困難であり、また体力的な制限により学習に十分な時間を充てられないことがあります。

その結果、基礎的な学力の形成が遅れ、復学後も学習内容の理解に困難を感じる可能性が高くなります。

2.自立の遅れ
過度の保護や依存状態が続くことで、年齢相応の自立が阻害される可能性があります。

たとえば、長期の入院や療養中は、日常生活の多くの部分を医療スタッフや家族に依存せざるを得ません。

この状態が長期化することで、自分で判断し行動する機会が減少し、年齢に適した自立心や問題解決能力の発達が遅れる可能性があります。

3.社会的スキルの発達不全
同年代との交流機会の不足により、適切な社会的スキルの獲得が遅れることがあります。

病院や自宅での療養生活では、同年代の子どもたちと自然に交流する機会が極めて限られます。

この時期は友人関係を通じて社会的なルールや協調性を学ぶ重要な時期であり、この経験の不足は、コミュニケーションスキルや対人関係の形成能力の発達に影響を与える可能性があります。

4.アイデンティティ形成の困難
病気や障害が自己概念の中心を占めることで、多面的なアイデンティティの形成が阻害される可能性があります。

深刻な病気や障がいを経験すると、自己認識が「病人」や「障がい者」としてのアイデンティティに偏りがちになります。

このため、他の側面(例:学生、友人、趣味を持つ個人など)でのアイデンティティ形成が十分に行われず、自己概念が限定的になる可能性があります。

5.将来設計の制限
健康上の制約により、将来の選択肢が制限されたと感じることがあります。これは夢や目標の設定に影響を与えます。

病気や障害の経験は、自身の身体的制限や社会的障壁に対する認識を強めることがあります。

これにより、特定の職業や活動が「自分には無理だ」と自己制限してしまい、本来なら挑戦できたかもしれない機会を自ら閉ざしてしまう可能性があります。

また、再発や症状悪化への不安から、長期的な計画を立てることに躊躇する傾向も生じやすくなります。

さいごに

アダルトチルドレンの形成過程は、子ども時代のトラウマ体験に深く根ざしています。両親の離婚や死別、深刻な病気や事故といった経験が、安全基地の喪失、自己概念の混乱、慢性的な不安など、長期にわたる心理的影響をもたらすことを見てきました。

しかし、大切なのは、これらの経験は決して克服できないものではないということです。適切なサポートと自己理解を通じて、トラウマから回復し、むしろ逆境を乗り越える力(レジリエンス)を育むことができます。

あなたの過去の経験は、確かにあなたを形作る一部となっていますが、それがすべてではありません。今この瞬間から、自分自身をより深く理解し、新たな可能性に向けて一歩を踏み出すことができるのです。あなたの人生には、まだまだ素晴らしい章が待っています。自分を信じ、前を向いて歩み続けてください。